大阪芸術大学×大阪府立近つ飛鳥博物館 協定締結記念
アートと博物館の対話/藝術考古学的プラクティスシリーズvol.1
翠光を纏う時空 -勾玉は目覚め、明日を照らす-
2022.2.5.sat-2.13.sun 10:00∼17:00 2月7日(月)休館
作品1のみ、3月13日(日)まで延期展示
大阪府立近つ飛鳥博物館
入場無料
・写真・映像作品のモチーフとなっている勾玉の実物を鑑賞されたい方は常設展・特別展の観覧料が必要となります。
・新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、37.5℃以上の発熱がある方、マスクを着用しておられない方はご来場をお控えください。
主催/大阪芸術大学
共催/大阪府立近つ飛鳥博物館
企画制作/大阪芸術大学芸術計画学科「プロジェクト演習Ⅰ・Ⅱ」アートプロデュース研究領域クラス
監修/大阪芸術大学芸術計画学科アートプランニング研究室
近つ飛鳥ギャラリー
アートの力で蘇生した勾玉の命は、魅惑的な異界を拓く
勾玉は永きにわたり、いにしえの人々が装い、誇示し、祈り、崇めた特別なものであった。その呼称には、魂・霊(たま)に通じる音が宿されていることからこの世とあの世を往来させる神秘的な力の表徴として、古代人のエモーションを震わせた美しき呪物と考えられていたのではなかろうか。
本展覧会は、千六百年あまり、土の中で微睡(まどろ)み続けていた勾玉(大阪府立近つ飛鳥博物館所蔵品)を令和に目覚めさせる作業から始めた。ライトボックスを用い、勾玉に光を集めた写真を撮影することで”強烈なエナジーを引き出したのだ。その写真をシートに転写し、最大約500倍の大きさになった3つの勾玉を空間に張り巡らすことで宙を飛翔するインスタレーションを構想した。近つ飛鳥ギャラリーには、地階から天井までが繫がる巨大な吹き抜けがあり、その天窓から射し込む光に透過させれば、柔らかい翠色の光で充されることになるのではないかと考えたのだった。私は、不思議な雰囲気を放つこの場所を“翠光を纏う時空“と名付けることにした。
それは、安藤忠雄氏の設計を活かさねば実現できないサイトスペシフィックな表現であり、黄泉の国/闇をテーマとする常設展示に対し、光で勾玉を蘇えらせることができることを際立たせたいと言う想いの表れでもある。また、この取り組みはアートと建築が交わることではじめて成立する新たな博物館の愉しみ方に挑んだとも言えるだろう。
まるで自分が翡翠の勾玉の中に入り込んでしまったような、或は夢なのか、幻なのか、わからなくなる異界/アナザーワールドという特別なシチュエーションであなたは、過去・現在・未来の時間が交錯した様々な作品と向き合い、どのような物語を紡ぐのだろうか。勾玉の謎を紐解くことは難しいが、それに想いを馳せることで勾玉のイメージを自分なりに掴むことはできるだろう。私は、勾玉に生と死、永遠と言う概念を操る果てしない空想力を感じ、驚き、たじろぐ。なぜなら、それは創造の源泉であり、明日を照らすパワーにもなり得るからだ。勾玉に秘められた価値はまだ他にも多々あると思われるが、この展覧会でそれを見つけ、探り、ひいては《人間》を深く思索することにもつなげて欲しい。
キュレーター/谷 悟 大阪芸術大学芸術計画学科教授
(アートプロデュース研究領域/アートプランニング研究室)
Life of Magatama revived with the power of art opens up a different attractive world
Magatama was something special which ancient people wore, were proud of, adored and prayed for for ages. Judging from its name with the sound of ‘tama’ included which leads to spirit and soul, it might be considered beautiful magic spells which moved ancient people as a mysterious symbol traveling between this world and the next one.
This exhibition started with the work of waking up Magatama, which has been dozing in the soil more than 1,600 years, into the year of Reiwa. We pulled out the powerful energy by taking a lit up photo using a light box. We’ve planned to design the installation of it flying through the air by transcribing it onto the sheet, stretching around 3 Magatamas in the air enlarged by at most 500 times.
As this art museum ‘Chikatsu Asuka Gallery’ has a huge stairwell from the basement to the ceiling, it should be filled with soft greenlight if penetrated in the light coming in through its skylight window. That’s what I thought. I’ve named this place with the mysterious atmosphere ‘Space-time covered with greenlight all over’
That’s the sitespecific expression which cannot be realized without taking advantage of the design of the museum made by Mr. Tadao Andoh, and that’s that we’ve hoped to differentiate the possibility of being able to light up Magatama to revive from the usual exhibition in the museum with the theme ‘The nation of the next world / the Darkness”
In addition, we may say that we’ve tried to propose the new way of enjoying art museums: the way of ‘art and architecture being intermingled’.
What story would you ‘weave’, appreciating various works through time, past, present and future, in the special situation of different world of dream or illusion, feeling as if you were thrown into Magatama made of jade?
It’s difficult to solve the mystery of Magatama, but, by giving thought to that, you could grasp the image of it in your own way.
I get awesomely amazed, as I feel the endless power of imaginativeness out of it that manipulate the concept of life, death and eternity.
That is because it can cause creativity and power that light up the future.
It may have a lot more value included, and, in this exhibition, I’d like you to find it, search for it, and besides, give deep consideration to what human being is all about.
Curator : Satoru Tani, Professor of Art Planning Depertment, Osaka University of Arts
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2 勾玉の蘇生/永遠の魂
Magatama comes to life/Eternal Soul
勾玉を令和に蘇らせるため、‟秘儀としての撮影”をおこなった。光を透過させて写すことで新たな命を引き込んだ勾玉の表情は、まるで生命体のようであり、宇宙のイメージをもたたえている。永遠に生き続ける勾玉の魂を際立たせたポートレート作品である。
©Photography:山里翔太/Shota Yamazato
左より、堂山1号墳出土(1点:大阪府大東市)
寛弘寺12号境出土(2点:大阪府南河内郡河南町)
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1 翠光を纏う時空
Space-time Covered with Suikou or Greenlight All Over
巨大な吹き抜けに大きな勾玉が飛翔する。天窓から降り注ぐ光が勾玉を透過し、天と地を結ぶ“翠光を纏う時空”を顕現させる。翠色に包まれる幻想的なシチュエーションの中で、往古から未来に向けて発せられた勾玉のメッセージと交感、思索することができる美しき場/トポスを創出する。
©Photography:山里翔太/Shota Yamazato (勾玉)
©Photography:山村幸則/Yukinori Yamamoto (模型)
3 勾玉に導かれ、邂逅する少女たち/明日を拓くための物語を紡ぐ
Girls meet, led by Magatama / ‘Weaving’ a Story to Open up the Future
勾玉に導かれ、いにしえといまが交錯した世界で出会う少女たち。5つの作品に眼差しを注ぎ、何を語り合っているのか、イマジネーションを膨らまして欲しい。勾玉が伝え、届けようとするメッセージを自分なりに読み取り、明日を拓くための物語を紡ぐ機会を創出させる。
©Photography:蘇我朋美/Tomomi Soga
4 勾玉の聲/《人間》との交信
Voice from Magatama / Communication with Human Being
勾玉に託され、宿された想いが勾玉の聲(夥しい数の言の葉や音の気流)として次々と映し出される。今に蘇り、命の鼓動を打つ勾玉、生き物のような質感をもった勾玉、近つ飛鳥風土記の丘にある古墳や自然の風景、勾玉を通じて出会った少女たち、勾玉が擦れ合い奏でられる玉響のしらべや勾玉を目覚めさせる古鈴の音色等で構成されたサウンドが織り成す世界で勾玉の彼方にある《人間》と交信することを誘う。
©Photography:山里翔太/Shota Yamazato
5 玉響の扉/皆の想いは、新たな勾玉を生む
‘Tamayura' Door /What Everybody Feels Creates another Magatama
勾玉の徴がある扉をくぐり、玉響(たまゆら)のしらべを奏でながら、内奥にある聖域/サンクチュアリティーへと向かう。そこは、令和の勾玉が群がり、日々、増殖しながら大きな勾玉が生成される場である。皆の想いが勾玉に新たな命を響かせる。
※本作品は、ワークショップと連動しています。あなたの作品を皆で創る大きな勾玉の一部として取り付けることもできます。
ワークショップ 令和の勾玉を創ろう
Workshop Let's make Magatama, Reiwa version
古墳から出土する勾玉は、様々な色彩、形態、材質で制作されており、バラエティに富む。そのクリエイティブな姿勢を受け継ぎ、超えるべく、自由にプラ板をカット、着彩、描画し、ユニークな‟令和の勾玉”を創作する。
※ワークショップは会期中、毎日、無料でおこないます。完成後、写真撮影を経て、登録証を発行いたします。ご希望された場合は、本企画のホームページで公開します。
ワークショップについて(2022年2月2日更新)
新型コロナウイルス感染者数が増加している状況が続いていることから、残念ながら中止させていただきます。
また、時期を改めて実施する予定です。
アートと博物館の対話/藝術考古学的プラクティスシリーズとは
博物館は考古資料を体系的に展示し、学術的な知議を提供する社会教育施設である。それらがどこから発掘され、いつ作られ、どのような機能をもつものなのかを学間の成果をふまえて実証し、解説することが使命と言える。博物館には夥しい数の遺物が展示されているが、来場者がひとつひとつのモノと対峙し、それに宿された本質を考えるための時間を大きく費やすことは正直難しいと言わざるを得ない。ましてや、今を生きる我々との関係性を問う意識は残念ながら極めて希薄であろう。
日本考古学の父である濱田耕作氏は、『通論考古学』で「考古学は過去人類の物質的遺物(に拠り人類の過去)を研究する学なり」と定義したが、それは、遺物に対する考察がダイレクトに人間に接近する手法であり、深い次元に到達するための手掛かりを手に入れることができる予感を抱いていたのではないだろうか。考古資料が我々と同じ人間たちが創ったモノであると言うことを忘れなければ、人間の存在を大きく浮上させることができるのではないかと考える。とりわけ、精神的所産としての創作行為、即ち、藝術的見地から遺物や遺構に迫るならば、重要なメッセージを得ることができ、新たな境地を拓く試みになるものと思われる。
アートが博物館と対話することは、言い換えれば、藝術考古学的なプラクティスにより、いにしえといまを繋ぎ、人間そのものに立体的に光を当てることである。それは、棲み分けられた領城を解き放つ学際的なアプローチであり、根源的に人間を思索することに挑むことである。2021年に大阪芸術大学と大阪府立近つ飛鳥博物館は協定を締結したが、このようなコンセプトを掲げ、博物館に新たな愉しみ方をもたらすための意義深き企画を継続的に構想、実践したいと考える。
キュレーション/谷 悟 (芸術計画学科 教授)
クリエイション
■作品1
企画構想/谷悟
写真/山里 翔太 (写真学科4年生)
テクニカルディレクション/山村 幸則 (芸術計画学科 非常勤講師・美術家)
技術協力/田村 佳士 (株式会社Rocks代表取締役) 和田 雅弘 (株式会社studio Sawna取締役)
■作品2
写真/山里 翔太
■作品3
写真/蘇我 朋美 (芸術計画学科4年生)
ヘアメイク/西村 奏美 (芸術計画学科4年生)
モデル/網治 樹音 (芸術計画学科4年生) 田邉 陽南子 (芸術計画学科3年生)
■作品4
映像編集/野々宮 健太 (芸術計画学科2年生) 網治 樹音
写真/山里 翔太 蘇我 朋美
サウンド/中南 賢治 (情報科学芸術大学院大学メディア表現研究科博士課程前期2年生/芸術計面学科卒業生)
言の葉/網治 樹音 西村 奏美 蘇我 朋美 石川 真由 川勝 友紀子 岡澤 利奈 田中 美帆 塩野 華未 大池 公平(芸術計画学科4年生)
山田 風夏 森 駿介 森田 希望 田邉 陽南子 須田 美乃里 (芸術計画学科3年生)
高升 梨帆 殷 麗佳 向井 萌 秋葉 愛佳 田中 優多 野上 稜太 野々宮 健太 片山 康平 出口 雄大 (芸術計画学科2年生)
廣瀬 時習 (大阪府立近つ飛鳥博物館副館長) 東藤 隆浩 (大阪府立近つ飛鳥博物館学芸員)
■作品5
インスタレーション/尾田 隆一 森 駿介 森田 希望 田邉 陽南子 松本 柊人 (芸術計画学科3年生)
大池 公平 (芸術計画学科4年生)
ワークショップ/芸術計画学科「プロジェクト演習Ⅰ・Ⅱ」アートプロデュース研究領域クラス近つ飛鳥チーム (芸術計画学科2・3年生)
広報
■ホームページ・SNS/山田 風夏 秋葉 愛佳 田中 優多 網治 樹音
■ボスター・フライヤーデザイン/野上 稜太 網治 樹音 中野 弥恵 (芸術計画学科4年生)
企画運営
芸術計画学科「プロジェクト演習Ⅰ・Ⅱ」アートプロデュース研究領域クラス近つ飛鳥チーム (芸術計画学科2・3年生)
網治 樹音 西村 奏美 蘇我 朋美 石川 真由 大池 公平 (芸術計画学科4年生)
山本 駿 (芸術計画学科 非常勤副手) 谷 悟 (芸術計画学科 教授)
Creative Direction : Satoru Tani /Graphic Desigh : Ryota Nogami,June Amiji, Yae Nakano
Logo Desigh : June Amiji, Yae Nakano,Ryota Nogami
Photography : Shota Yamazato, Tomomi Soga, Yukinori Yamamura / Text : Satoru Tani
English Translation : Ichiro Sano
-展示アーカイブ-
2020年開催